ありったけの「好き」を、君に。
***


4時間目が終わって、私たち2年7組は教室に戻った。



「ましろ、次、なんだったっけ」



ましろは、私にとってとても大切な存在。



いつも私とましろと美奈は一緒にいるんだ。



私がいつものように次の時間割を訊くと、ましろは困ったように笑った。



「次、給食だよ?いつもは給食のために生きてるって感じなのに、変。きっと疲れてるんだよ」



『疲れてるよ』が今日で2回目。私、そんなに疲れてるのか?



「あれ?そうだっけ。忘れてた」



私はましろにおどけてみせて、そのまま窓際の自分の席に戻った。



……給食の用意が終わるまで、ちょっと休もう。



淡いクリーム色のカーテンを引っ張ってきて自分の席だけ囲み、小さな“部屋”を作った。



すとんと椅子に座り、机に肘をついて顎を置いてみた。



「……私、そんなに疲れてるかなあ」



暫く窓の外を眺めながら考えていると、カーテンを開けて加賀が“部屋”に入ってきた。



…加賀は背が高いな。



私の向かい側に立っている加賀は、かなり顔を上げないと目を合わせられない。



「なにー?」



「いや、なにじゃなくて。それ俺の台詞。何でそんな元気ないの?」



あれ?加賀ってこんなに優しかったっけ。



まあいいか。悩み聞いてくれるみたいだし、私なかなか人に相談なんてできないしね。



「彼氏とね、別れたんだ。円満に別れたつもりだったんだけど……」



「そっか」



「…いつも隣にいた人がいないっていうのは、堪えるね」



よく行く本屋さんで彼氏と出会った。



週に1、2回だけ、その本屋さんでこっそり会っていた。



4つ年上で、優しくて、一緒にいるだけで心地いい人だった。



振ったのは、私。



私たちの間に流れる空気はあまりにもゆっくりで。



恋人というより、お兄ちゃんみたいにしか見られなくなったから。



彼は九州の大学に行くことになったらしいから、もう会うことはできないだろう。



「……そうだな」



加賀は同情の笑みを浮かべて。



「まあ、元気出しな。」



そう言って私に何かを握らせた。



そして“部屋”から出て自分の席に戻っていった。



チロルチョコが私の掌に座っている。



ご丁寧に『無理すんなよ』ってメモまで掲げているではないか。












きゅっと、心のどこかが締めつけられた。
















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