ありったけの「好き」を、君に。
〜♪ 〜♪〜♪
授業終了のチャイムがなって、私たち2年7組は数学の呪縛から解放された。
6時間目は待ちに待った体育。
金曜日の最後を体育で終われる私たちは幸せだと思う。
女子は全員6組に入って楽しく着替え始めた。
体育は6・7組が合同で男女別だから、女子は6組の教室で着替えることになっているんだ。
「ひいちゃん、早く!ほら、ましろも!」
美奈は早く行きたくてしょうがないようだ。
もう着替えを済ませている。
私とましろは急いで着替えをすませると、美奈に続いて体育館へと走った。
体育館は私たちが暮らす校舎の南側にあって、1階が武道場とミーティングルーム、2階がアリーナになっている。
普段体育で使うのはアリーナの方。
だから長い階段を登らないといけなくて、体力のない私は若干息切れしながらアリーナに駆け込んだ。
「わー、見てひいちゃん!男子が野球してる!」
美奈がアリーナの南口のドアからベランダに飛び出て、グラウンドを見下ろして言った。
「おー、ほんとだ。誰か気付けー」
私も美奈の隣に並んで見下ろし、手を振ってみた。
美奈も隣で手を振りはじめた。
男子はゲームに熱中しているらしく、なかなか誰も気づいてくれない。
そろそろ体育の授業、戻ろうかな……なんて考えていたとき。
「あ、誰か気づいてくれた!誰だろ………ぁ、」
ーーーー加賀。
加賀が、最初に気付いてくれた。
何故か嬉しくなって、またさっきみたいに鼓動がうるさく鳴り始めた。
「加賀、がんばれ!」
ピッチャーが交代になってマウンドへ走っていく加賀の背中に、精一杯エールを送った。