ヘヴン
*
近くのスーパーに入ると、夕方の買い物客たちが一斉に振り返り、驚いたように目を丸くして私を見た。
なぜだろう、とぼんやり思いながら、私は商品棚の間を泳ぐように漂い、目的のものを探す。
歩いていたら、視界の端にひらひらと白くたなびくものが映ったので、何気なく目を向けた。
それは、柱にとりつけられた大きな鏡に映った自分だった。
でも、あまりに見慣れない自分だった。
素肌に白いシーツを巻きつけただけの姿。
そして、腰まで伸びたぼさぼさの髪は、すべて色が抜けて真っ白になっている。
まるでおばあちゃんのような白髪。
いつの間にこんなことになっていたんだろう。
私は唖然として鏡の中の自分を覗きこむ。
それから、胸の奥のほうから笑いがこみあげてきた。
うれしい。
だって、この髪は、魔法の白い粉と同じ色。
少しだけでもあなたに近づいたような気がして、うれしくてたまらない。
私はあふれる笑いを抑えることもせずにふらふらと歩き、文房具が並ぶ棚にたどりついた。
目的のものを目線で探す。
よかった、あった。
あまり需要がないからか、一番下の段で埃をかぶっていた長方形の箱を手に取り、レジへと走った。