あの日、あの時、あの場所で。
俺は誰も見ていないのを確認してからドアを開け、杏奈を中に入れ、俺も入った。

空き部屋には机や椅子があって。

そのうち1番丈夫な椅子を選んで杏奈を座らせて、俺も座った。

「まず何から話そうか」

「え?」

決めてなかったの?とてもいいたそうな顔だ。

「じゃあ、まずあれからかな」

「うん?」

杏奈の頭にははてなばかりが増えていくのだろう。

「杏奈さ、俺と初対面じゃないの知ってる?」

「え…っ?」

「やっぱり知らなかったんだな」

「ごめん…いつ会ってるのか教えてもらってもいい?」

「幼稚園…かな。一番最初は。
恭も、美穂もいた」

「うそ…」

「嘘じゃない。あの頃から俺は杏奈のことが好きだった。

その後、公園で転んでる子を起こして笑いかけてたり、迷子になってる子のお母さん探してあげたり…いろんな場面で人助けをしてる杏奈のことが大好きだった。
同じクラスになって、距離が近づいて、俺が杏奈に一番近い存在だって思ってたのに、先な人ができたって聞いて…

だからさっきはごめん…大声出して怒鳴ったりして。

だけど、俺が一番近い存在だって思ってたのが自惚れだったなんて恥ずかしいやつだよな…

あの好きは友達としての好きだったんだろ?

誤解してごめんな」

そうすると、前に座っている杏奈がか細い声でなんで?と言ったのが聞こえた。

そして、

「なんで…?なんでなの!
私だって、蓮也のこと大好きなのに…!
どうして誤解だないて言うの!
行き場をなくした私の気持ちは…
蓮也が好きって気持ちはどうなっちゃうのよ!」

ポロポロと大粒の涙を流しながら杏奈は大きい声でそう言った

俺は信じられなくて

「え?」

と言った。杏奈が

「それでも伝わらないんだったら私は諦めるよ…。一年間の恋にピリオドを打つよ…?」

「そんな…そんな悲しいこと言うな…
俺は10年くらいずっと好きだったんだぞ?俺の気持ちこそ行き場なくすだろ…」

「蓮也…?」

「俺は、幼稚園の時からずっと好きだったってさっきも言ったろ?」

「うん…ホントだったんだ…」

「お前、俺のことなんだと思ってんだよ笑」

「少し俺様だけど、優しくて私の大好きな人?笑」

「お前なー…」

俺はたまらず杏奈を抱きしめた。

そして耳元で囁いた

「なんでお前はそんなに可愛いんだよ」

と。

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