あの日、あの時、あの場所で。
ー30分後ー

「美穂!付き合ってくれてありがとね!
おかげで可愛いの買えたよ!」

「ううん!そろそろ暗くなるね。
うちの家泊まる?」

「泊まるっ!今日多分帰ってこないから笑」

「そっか…」

「うん!もう慣れちゃったけどね!」

「杏奈。家に帰ったらお手伝いさんしかいない生活を当たり前にしちゃダメだよ。」

「そんな事言ったって…」

「分かってるよ。大丈夫。」

「ねぇ、君ら2人?」

後ろを向くと知らない男が2人。

「俺らも2人なんだよね。どっか遊びに行かねぇ?」

「いえ、結構です。杏奈。行こう?」

「う、うん…」

「えー!そんな事言わないで!」

「嫌です。腕、離してください。」

「離さねぇに決まってんだろ!
さっさとこいよ!」

「嫌です…っ!離して…っ!」

「杏奈…っ!」

「君は彼女の心配してる場合じゃないでしょ。杏奈、杏奈って。」

「そんなん私の勝手でしょう!?」

「さっさとこいよ!」

男の人の力には勝てない。もう諦めよう。杏奈と美穂はお互いにそう思った時…

「美穂ちゃん!杏奈ちゃん!」

「新田さん!杏奈!」

その声とともに、2人の腕をつかむ手は消えていた。

杏奈は足に力が入らなくなり、やばい。倒れると、次に来る衝撃に構えようと思ったが杏奈を包んだのは痛みではなく、あたたかい体温だった。

「良かった…杏奈ちゃん…。
怪我、ない?」

「うん…。大丈夫…。ありがとう…
藤崎くん…。」

「蓮也だよ。」

「蓮也く「蓮也。」」

「蓮也…?」

「うん!」

ーin 美穂ー
あれ?杏奈は無事かな。
後ろを向こうと振り返ると…
美穂の体はあたたかいぬくもりに包まれた。

「おい!美穂!」

「瑞江…?」

「恭太だけど。」

「恭太…なんで私はあんたの腕の中なの?」

「倒れそうになったんだろ。」

「そっか…杏奈は?無事?」

「うん。腰抜けちゃって今は蓮の腕の中。」

「そっ…か…。良かった…」

「泣かないで。」

「泣いてなんか…っ…ないっ…グズ」

「ははは笑泣いてるじゃん笑」

「泣いてない…っグス…」

「あのね、恭太…!怖かったよ…!
もう、今までの生活には戻れないのかなって…もう二度と杏奈とか藤崎とか、恭太とかと一緒に遊べなくなっちゃうのかなって思ったよ…!」
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