不器用な愛を刻む
『本当にそれで』
体が海に沈むように
底へ落ちていくような
持ち上がらない何かに
押さえつけられている感覚がする。
何の音もしない
静かなあたりに
それでも耳を澄ませながら
段々と
重い瞼を開けた。
「………。」
まだ暗闇に慣れず
全然何も見えない目。
それでも光を探して
視線だけを右側に向ければ
月明かりが差し込んで
薄っすらと、縁側らしきものが見える。
少しずつ目が慣れてきて
暗闇でも
少し辺りの様子が分かるまでになった。
…見慣れない天井に
知らない間取りの和室。
障子に囲まれ
誰もいない部屋に1人
自分だけが、横たわっていた。
(………どこだ、ここは。)
───11月18日 深夜 善 起床。