不器用な愛を刻む
「…フッ……俺も重症だなァ。」
拾った1人の女に
こんなに胸が乱されるなんてよォ---。
善はそんな風に思いながら
自嘲めいた笑みをこぼした。
幸せになれと言って
あそこに自分の気持ちごと置いてきたつもりで
出て行ったというのに。
これじゃ未練がましくて
みっともねぇ男だな、と思って
善が椿の部屋から
出て行こうとした時。
あるものが───目に止まった。
(………ありゃあ…)
───文、か?
出て行こうとした時に
椿の机の引き出しから
顔を出すように
飛び出していた白い紙を見つけて
…善は思わず、足を止めた。
そして
見てはいけないと思いながらも
最後の思い出の品だと思い、
つい…手を伸ばしてしまった。
(………封筒に名前は無ぇな。)
白い封筒に
宛先も自分の名前も
何も書かれておらず
善はそのまま
封筒の栓を解く。
そしてそこに入っていた
文字の書かれた便箋を開いて
善は静かに----目を見張った。
(………俺宛、だと…?)