不器用な愛を刻む
──なんと
開いた文の一文目に書かれていたのは
善の名前だった。
善は少々混乱しながらも
静かに
その下の文を読み進めていった。
『 拝啓 善様
善様に手紙を書くのは初めてですね。
あなたにだけは見られてはいけない手紙ですけれど、私が永遠に持っているなら平気ですよね。
これは私の独り言です。
どうか今だけ、正直でいさせてください。
あの夜に善様が意識を無くされて
呼吸を止めた時は
本当に、私自身も
心臓が止まるような思いをしました。』
(…………。)
この文を見て
これは自分が倒れてから
書かれたものと知る。
ということは
きっと、喜一のことも書かれているのだろう。
そう思った善は
一瞬読むことをやめようとしたが
何だか途中でやめるのも
スッキリしないだろうと思い
読むことを続けた。