不器用な愛を刻む
『私は
貴方の側を離れることに決めました。』
(───!!)
善は
その文を読んで
ドクッ---と、
自分の鼓動が鳴るのを感じた。
そして
嫌な予想と
鋭い勘が即座に働いて
善は急ぐように
2枚目へと目を移す───。
『貴方の重荷や弱みになるならば、と
私は離れることを選びました。
そのことを喜一さんにもお話ししました。
すると喜一さんから
自分が代わりに引き取ると
提案を持ち出されました。
しかし役所は男性の働く場所。
女の私が1人でいるのは
危なすぎると
そこで喜一が提案してきたのが
彼と結婚することでした。』
「っ──!!」
その文を見て
善は思わず、息を飲んだ。
…ということになると
全てが、変わってくる。
喜一と椿は
お互い好いているから
婚約しているということでは
なくなるのだ──。
『はじめは戸惑いましたし
躊躇もしました。
女1人で働いて
生きていける世の中ではないことは
私も百も承知でしたし、
これが最善の手であることも
私は分かっていました。
ですが
それでも躊躇する理由が、
私にはあるんです。』