不器用な愛を刻む
「………っ…。」
読み終わってから
善は手紙を持つ手を震えさせながら
最後の文を見ていた。
───ずっとお慕いしておりました。
その文を見ながら
善は昨日
自分が彼女や喜一に向けた言葉を
振り返った。
『本当にそれで、いいと思ってるのか。』
『………何言ってんだ喜一。
いいと思うに決まってんだろ?』
───違う。思ってなんていない。
『…あいつはお前といた方が、幸せになれる。』
───そんな風にも 思ってねェ。
『じょあ何で何であの日、助けに行ったんだ。』
『……忘れたな、そんなこと。』
───そんなわけねェ。
俺があいつを助けに行ったのは……
『…これで俺もお役御免だ。
お前もやっと、本当に幸せになれる。』
───違う。違ェんだよ椿。
『………じゃあな。お幸せに。』
俺が思ってたのは
そんなことじゃない───。