不器用な愛を刻む
善は手紙を封筒にしまって
着物の中に入れると
煙管に火をつけなおして
フー…と、一服吸い直した。
『……喜一さんには、本当に良くしてもらっています。
…善様の命を救ってくださったのも
彼のおかげ…ですから。』
尊敬もしながら
彼のことを……愛しています。
そんな風に言った椿の
本当の真相を知ってしまった善は
その彼女の言葉を思い出しながら
ククッ…と、妖しい笑みを浮かべる。
(…ったく……
俺のためにと思って自分から身を離そうと考えるたァ)
随分深く慕われたもんだぜまったく---。
善はそんな風に思いながら
愉快そうに笑みを深めると
そのまま階段を降りて
店の玄関へと歩いていく。
(……本当に、お前は酷ェ女だ、椿。)
何が
俺の気持ちも知らねェで
"俺のため"だ。
こっちだって
命に代えても守りてェと考える程
お前を想ってるっていうのによ──。
(……喜一には悪いが…)
-----やっぱりこいつァ
お前にくれてやるには惜しいみてぇだ。
善はそう思いながら
笑みを深めて
颯爽と、店を後にした──。