不器用な愛を刻む
「私は……喜一さんと結婚することが
ずっと……願いでしたから…。」
「………椿ちゃん…。」
涙で震えている声を
振り絞って、無理にそう告げる。
そんな様子の椿の心中を察して
喜一は切なそうにその姿を眺め
小さく椿の名前を呼んだ。
「…………フッ…本当に…
酷ェ女だよ、お前は。」
「………。」
「…そうやって、俺のそばから
勝手にいなくなるつもりなのか。」
こんな文なんざ置いて行きやがってよォ?
善は少し自嘲気味に笑って
それから着物に仕舞っておいた
あの『手紙』を椿の前で取り出す---。
「───っ!?」
それを目にした瞬間に
椿の目は 大きく見開かれた。
椿の鼓動が、ドクンドクンと大きく鳴って
震える声で
「何故、それが…」と小さく呟く。
善はそれに対して
フッ、と嘲笑うかのように
鼻から笑みをこぼした。
「………こりゃ最近書いたモンだろ。
ちぃと気変わりが早すぎやしねェか、椿…?ん?」
──善の言葉に、椿が言葉を詰まらせる。
「まぁ、見ちまったからにゃァ……
もう俺も黙ってねェぜ、椿。」
静かな部屋に
そう言った善の
妖しい笑みと言葉だけが
そこに残される──。