不器用な愛を刻む
───ドクン、ドクン、ドクン
決して逸らすことを許さないような
善の強い視線に
椿は大きく鳴る自身の鼓動に
息を飲む。
「…っ……そ、んな…。」
「………俺ァ本気だぜ、椿。」
先ほどと少し変わり
鋭い視線の中に
善は熱いものを込めて
椿にそれを向ける。
射抜かれるような視線に
そんな気持ちを混ぜられ
椿は感じ取ると
更に鼓動を、大きく鳴らせた。
(───そんな、まさか。)
椿は
耳にした善の言葉の数々に
頭を混乱させた。
……想っているのは自分だけで
そばにいたがっていたのも、自分だけだと思っていたから。
見ず知らずの娘だった自分の
自殺を止めたことに責任を感じて
守ると言ってくれたのだと。
彼の名前の通り、善意ある人らしいと
ずっと思っていた。
───だから、自分には
本当は何の感情も抱かれていないと
考えていたのだ。
だから
…離れれば、彼の荷も降りるだろう。
そんな風に考えていた自分の考えが
間違っていたなんて
思いもよらなかった───。
「……何泣いてんだ、椿。」
「っ……だ、って…。」
───だって
そう言いながら
あまりの嬉しさに
椿は我慢していた涙を
ポロポロと流し始める。
「っ…ということは…私は……
善様のもとにいても良いって…こと、なんですか…?」
「………そりゃあ少し違ェな。」
「っ…え……?」
「──『俺』が。
俺がお前の、そばにいんだよ。」
涙を流す椿に
善はいつもの妖しい笑みを浮かべながら
顔を近づける。
椿の腕を掴んでいた手を離し
優しく……両手で椿の頬を包んだ。