不器用な愛を刻む
(……そんなに働きてェのかコイツは…。)
普通の女なら
働かずに楽して暮らしていきたいと
思うところを
椿はどうやらそうではないらしい。
善は椿から腕を離し
片手で頭を掻きながら
彼女に背を向けて
先ほどまで自身が座っていた
ソファに腰掛ける。
そして
何やら考えるように
まっすぐ前を見つめながら、黙る。
(……怒ってる…かな…。)
そんな様子の善を見て
椿はそんなことを考える。
自分が善の意見に反論したのは
これが初めてだった。
お願いは何度かしたことはあるものの
自分の意見を押し通そうとするのは初。
それ故、善の様子に敏感になっていた。
「…………どこの茶屋だ。」
「…え?」
そんな時
ふと善が口を開く。
椿が少し驚きながら
その茶屋の場所を説明すると…
「……仕方ねェ。
俺も一緒に働くって条件で飲めるんなら…許可してやらなくもねェぞ。」
「……へ…。」
(ぜ、善様も一緒に……?)
何故?と
単純に疑問を抱きながらも、
椿は働けるならと
その善の言葉にコクっと頷く。
すると善は
いつものように
妖美な笑みを浮かべた。