不器用な愛を刻む
「人募集してんだったら…
俺も一緒に行きゃあ雇うだろ。」
まぁ
断られた時にゃ椿も道連れだが──。
善のその言葉は口の中に留まり
ただ椿には
いつもの笑みを向けた。
「そうですね。
さっそく明日、訪ねてみましょう。」
「そうだな。」
「…ふふ。
善様が働く姿すごく楽しみです。」
椿はそう言いながら
あの茶屋の仕事着を着ながら
愛想よく接客している善の姿を想像して
クスッと笑みをこぼす。
(………ったく、呑気なこった…。)
そんな椿の姿を横目で見ながら
善は煙管を吸って
フッと笑みをこぼす。
…以前の仕事をしていた時は
ほとんど夜は一緒に過ごさず
椿を1人にしていた。
しかし 足を洗ってからは
こうして2人で平和な時間も
過ごせるようになった。
───その幸せを
善はしみじみと感じるようになっていた。
「……椿。」
「はい?」
「…くれぐれも何かないようにな。」
「……? はい…。」
椿は
そう言って窓に視線を向けてしまった善に
何のことだろう、と思いながらも
そう返事をする。
(……怪我、とかかな。)
善様はお優しい方だから
きっとそういうことだろう、と
意味を捉えて更に嬉しさを感じる椿。
「………。」
そんな椿に聞こえないような
小さな溜息を吐く 善だった───。