不器用な愛を刻む
───そして 翌日。
「善様、入りますよ。」
「あぁ。」
椿が隣に立つ善に
そう断ってから
目の前の茶屋の入り口を開ける。
ガラガラ、と開ければ
笑顔でこちらに駆け寄ってくる店主。
そして椿を見て
ハッと気づいて、笑顔を浮かべた。
「椿ちゃんじゃないか!
かーっ!来てくれたのかい!」
「はい。ぜひここで
働かせてもらいたいと思いまして。」
その店主からの言葉に椿が笑顔で答えれば
店主は嬉しそうに笑顔を浮かべて
歓迎してくれた。
「元さーん…って、あら!椿ちゃんじゃないかぁ!
何だい、働きに来てくれたのかい??」
「はい、そうです。」
ぜひともお願いしたくて、と
後からやってきた店主の女房に
またも笑顔で答えると
女将は笑顔で
椿の頭をくしゃくしゃと撫でる。
そしてそこでやっと
隣に立っていた善の存在に
2人が気づく───。
「……あんた…椿ちゃんの知り合いかい?」
「えぇ。」
善のいつもの身なりからして
普通には見られないのはいつものこと。
妖しくも高価そうな格好を見て
ポカンとしている2人に
椿が善を紹介する。
「あ、えっと…
こちらは善様と申しまして、
…わ、私の……」
(……私の……保護者様?君主?恩人?)
どれも合っているようで
何か紹介するには違うような……。
でも、何て言えば?
椿がそう言葉に迷っていると
2人は善と椿を交互に見てから
何か納得したように、頷く。
「まぁ椿ちゃんの知り合いなら
大丈夫なんだろうね。
善さんだったかい?あんたもここで働く?」
女将さんが笑顔でそう話しかけると
善はフッと口角を上げて
「ぜひともそうしたい。」と言えば
店主と女将は喜んで
それを聞き入れてくれた。
それを見て、椿はホッとする。
「ふぅ……、良かったですね、善様!」
「あぁ、そうだな。」
「───じゃあ2人とも、こっちにおいでーー!」
2人はそう話しながら
女将が呼んだ方へと
一緒に歩き出した。