不器用な愛を刻む
「他の男と戯れるたァ…構わない俺に対しての当てつけかァ、椿?」
「っ、ぐぅ…!」
善は妖しく笑いを零しながら
苦しむ景次を眺めながら
椿へそう告げる。
「っ、善様やめてください!!
景次さんが…!!」
「──俺に指図すんじゃねェ!!」
「っ!!」
───ビクッ!
止めに入ろうとした椿に
善がそう一喝する。
鋭い視線で睨まれて
椿は足が竦むが
息苦しそうに
顔を歪める景次を見て
怯えながらも
初めて善へ反発した───。
「て…手を離してください!善様!」
「──!!」
いつもなら
自分の姿に怯えて
順従に従うか、動けないでいるのに
こうして自分の手を掴んで
必死に離そうとする椿。
善はそれを見て
目を見開きながら
渋々、景次の首を掴む腕を離した。
「ゲホゲホ…ッ!!」
「っ、景次さん…!!」
その途端
椿は首を抑えて
咳き込む景次に駆け寄って
大丈夫か、と心配そうに声をかける。
───そんな彼女の姿にさえ
善は許しきれない
何かの感情に
心が飲み込まれていく感じがした。