不器用な愛を刻む








(何故、俺よりコイツに行く───?)









仕事の時だってそうだ。






昨日から随分この男と
仲良さそうにして


2人で笑い合って。






頭を撫でられ
それに嬉しそうに微笑んで



2人で買い物に行く。









自分の前で堂々と


2人で接吻を交わして───。










「…………だろ…。」

「……善、様…?」















「テメェは俺のもんだろうが椿ィ!!!」











(───っ!?)









善は怒りに歪んだ顔でそう怒鳴ると




景次のそばに寄る椿の腕を
グイッと引っ張り上げて




───ドンッ!!と

壁にそのまま押し付ける。










「っ、善様…?!」

「俺1人じゃ不足だってのか…?
テメェは他にも男がいねェとやってらんねェのかァ?!あぁ?!」












これほどまでに










今まで椿へ怒鳴って
怒りをぶつけたことなどない善が



いつもの余裕な態度とは裏腹に



こんなに取り乱して

嫉妬の炎に燃えたことは
これが初めてであった。








椿は動揺しながら


善の鋭い瞳から目を離せず
小さく震える。






そのそばで


景次が小さく声を漏らした。










「……オメェはどうなんだよ。
人のことばっか責めやがってよォ…。」

「………んだと?」









ゆっくりと立ち上がった景次が



あの穏やかな表情を
見たことのない険しい顔に変えて



善を思い切り睨んでいた。









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