不器用な愛を刻む
---------ビュンッ!!
「っ…?!」
すると
一瞬の間に椿の目の前を
鋭い簪(かんざし)が通り過ぎて、
それは振動に揺れたまま
先にあった木の壁に刺さった。
---誰の仕業かは言わずとも分かる。
「…喜一。
分かってるたァ思うが---
もし、そこの女に何かしやがったら
お前の首…斬り落とすぞ。」
冗談にしても怖過ぎる言葉を
読めない笑みを浮かべたまま
発したのは、善。
その言動に血の気が引くように
怯える椿のすぐ横で
男はクスクスと笑みをこぼしながら
善に視線を向ける。
「ククッ…随分と入れ込んでるんだね?
…大丈夫だよ。変な真似なんて絶対しないから。」
ただ挨拶くらいはいいだろう?
そう言って男は再度
善に優しく笑みを送り、
椿に視線を戻した。
「はじめましてお嬢さん。
僕は善の友人であり役人の 喜一と申します。」