不器用な愛を刻む
今日は昨日のこともあり
茶屋は休みということで
結局起きたのはそれからしばらく後──。
だるい体を何とか起こして
着替えると
椿は まだ着替え途中の善へ
声をかけて出かけて行く。
「善様、私少し出掛けてきますね。」
「あ…?どこにだ。」
「食材を買いに、すぐそこです。」
心配しなくても大丈夫ですよ、と
椿が笑顔で言うものの
善は少し心配が拭えない。
いつかも
どこかの店の店主に絡まれて
喜一に助けられていたりする前科があったことを思い出す。
目の前に立つ椿を見上げながら
その無防備そうな笑顔に
少々溜息を吐きながらも
渋々それを了承する。
「変な輩に絡まれないようにな。」
「はい。
それじゃあ、行ってきますね!」
そう言って出て行った椿の
後ろ姿を見送りながら
善は着物を着て
いつもの煙管を
口元へと持っていく。
(……困ったもんだな、まったく…。)
スーッと息を吐きながら
いつもの定位置まで移動して
窓から町中を観察する。
つい先程出て行った椿の姿を
目に捉えながら
善はフッ、と
いつもの妖しい笑みを浮かべた。