不器用な愛を刻む
───結局
善との買い物が楽しくて
ついつい買いすぎてしまった椿は
荷物の半分を善に持たせて
一緒に歩いて帰ることに。
時刻はすでに
お昼を回りかけている。
「すいません、重い荷物を持たせてしまって…。」
「気にする必要ねェよ。
むしろその細い腕に持たせる方が怖ェ。」
妖美な笑みを浮かべながら
彼女にそう言う善も
心なしか上機嫌に見えて
椿も少し、ホッとする。
家に到着し、
荷物を整理してすぐに昼食の準備にかかる。
善はそんな彼女の後ろ姿を眺めながら
煙管に火を付けて
フーッ、と息を吐く。
「…何か手伝うか?」
「いえ、大丈夫です!
善様はそこでくつろいでいてください。」
椿にそう言うも、あっさり断られ
善は仕方なくいつもの定位置に座り
外を眺めて待つ。
(………ん? ありゃァ…。)
そんな時
家の下にやってきた
黒い姿に
善は思わず腰を上げて
玄関まで行き、扉を開ける。
───ガラガラ
「…何の用だ、こんな時間に。」
「わぁ、びっくりした。
俺が開けるより先に開けないでよ。」
心臓に悪いでしょ?と
爽やかに笑う男が
1人、善の前に立っていた。
「善様…?どなたかお客様で……あ!
喜一さんじゃないですか…!」
「やぁ、椿ちゃん。昨日振りだね。」
「昨日振りだァ…?」
椿も気になってやってくると
そこにいた喜一を見て
笑顔を浮かべ、中へ招き入れる。
善が1人
喜一の言葉に引っかかっていた。