不器用な愛を刻む
礼儀正しく自己紹介をして
お辞儀をする姿は
どこかの貴族のお坊ちゃんのようで
上品に見えた。
椿も自己紹介をして
深々とお辞儀をすると
窓辺に佇む善が
今までの笑みを引っ込めて
無表情でその光景を見ていた。
-----でもそれも、一瞬だった。
「それじゃあ、本題に移ろうか…善。」
喜一の言葉に
また笑みを復活させて
ククッ…と喉で笑いながら
着物の内側から煙菅を取り出して、
それを吸い出す。
それを眺めながら、
喜一は服のポケットから紙を取り出して
それを善の目の前に差し出す。
---こうして彼らの取引が行われた。