不器用な愛を刻む




…それから準備を終えて
お店の鍵を閉めてから

町へと出かける。





…とりあえずお茶の葉と
食材を買いに行かなければいけない。


椿はすぐにその店に向かって
歩き出した。












「おうおう嬢さん!
今日は特に良いモン揃えてるぜぇ!寄って見て行きな!」






その途中
椿はそうある店の店主に声をかけられ
足を止められる。


店主は店の前で椿を捕まえて

自分の売っている商品を
手にとって見せびらかす。





「こりゃあ上等な髪留めさ。
この簪だって、人気職人の新作なんだ。」






ほら綺麗だろう?




そう肩を抱かれながら
ホレホレと商品を突きつけてくる店主に


少し怯えながらも
そうですね、と相槌を打つ。





(……でも本当、綺麗…。)






自分の小遣いでは
手に入らない値段のソレを眺めながら

椿は内心そう思っていた。





もしこれをつけて善に会ったら…

善は自分を 少しは意識して見てくれるだろうか。






そんなことを考えながら
ボーッとその商品を見ていると




ふと背後から

誰かに声をかけられた。








「あれ、これはまた偶然…
こんなところでどうしたの椿ちゃん?」

「え?……あ…!」







振り返って見てみれば


そこには昨日会った客人---喜一がいた。






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