不器用な愛を刻む




「っ、喜一さん どこに行くつもりで…!」

「まぁまぁ、ここで会ったのも縁だし
少しお茶でも飲まない?」






もちろん僕が持つからさ。




そう笑顔で告げられて
椿は何だか強く否定できず

言葉を詰まらせる。




別に彼が悪い人物ではないだろうと
思ってはいながら


しかし さほど親しいわけでもないため

そこまで甘えるのもどうなのだろうか、と自分に問いていた。






(…さっきも助けてもらったし…。)






肩を抱かれながら
買うまで逃してくれなさそうな

あの店主から

喜一は自分に話しかけ
商品を買ってその場から離してくれたのだ。




ついでにその商品も
自分に与えるつもりらしく、

私の手にそれを握らせて

そのままお茶屋に入り込もうとしている。






「…あ、あの…喜一さん…。」

「ん?あ、断ろうとしてるでしょ?
寂しいなぁ〜 2回もフられちゃうなんて。」






(うっ……。)






椿は喜一にそう言われて
余計に断りづらくなり

仕方なく首を縦に振って、お茶屋に入った。






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