不器用な愛を刻む
縛ってあった布を取り外せば
その下には、
相手にやられたのか…切られた痕があり
血こそ止まってはいるものの
痛々しいのには変わらなかった。
(…この位だなんて……そんな軽い傷ではございませんよ、善様…。)
強がっていたのか
はたまた心配をかけまいとしたのか---
彼がこの傷を隠したことに
椿は余計心配を募らせて
辛そうに少し顔を歪めた。
そして消毒をしてから
ゆっくりと包帯をその腕に巻いて行く。
その間、善は決して苦痛を訴えるような
声や言葉は上げずに
黙って身を彼女へ託していた。
「……善様…。」
「………。」
「…もう怪我を隠したりなんて…しないでくださいね。」
包帯を巻きながら
椿は静かに善にそう告げる。
「私には何も隠さず申しつけください。
……隠されたりしたら、それこそ余計に心配です。」
「………。」
「…善様…。」
そう言いながら
椿は包帯を巻き終えて
ゆっくりと、目の前の彼に
揺れる瞳の視線を…向けた。
「…どうか無理だけは、しないでください…。」
それだけは……絶対に…。