不器用な愛を刻む
椿がそう言えば
ずっと黙って彼女の様子を眺めていた善が
ふと左手を持ち上げて
そして
---そっと、椿の頬に手を添えた。
「…っ……!?」
その彼の行動に
椿は瞳をさらに揺らして
動揺しつつも
黙って
椅子に座る善の目を見上げ、見つめる。
……真っ直ぐな彼の瞳に
思わず吸い込まれるような
感じがした。
捕らえられた視線に
激しく鼓動を鳴らしながら
言葉を待てば
ふと 善が…口を開く。
「……やっぱりお前は…
どんなお前でも…綺麗だな。」
(………え…っ…?)
そう言いながら
善は静かに…椿の頬をその手で撫でた。
するとわずかに
椿は頬を赤く染め、目を見開いていた。
椿の鼓動が
さらに激しく鳴り立てる。
「お前が介抱してくれるってんなら……
たまにゃあ怪我も…悪くねぇなァ。」
なぁ…椿?
善は彼女へ静かにそう告げると
いつものように妖美な笑顔を
月明かりに照らされながら…椿に向けた。