不器用な愛を刻む
(っ……!)
耳に響いたその艶めいた声に
鼓動を高鳴らせながら
椿は頬を赤く染めて彼を見上げる。
「…な、何変なことおっしゃってるんですか!
ほら、手当ても済みましたから
ちゃんと寝てゆっくり休んでください…!」
動揺しつつも
椿は善にそう言うと
手当ての道具を片付けて仕舞い、
彼の前から体を退ける。
それと同時に頬から手が離れ
椿は少しだけ、ホッとした。
(きっと善様は私をからかって
反応を面白がってるだけ…。)
それ以外の感情があって
あんなことをしてきたんじゃない。
だから…自惚れちゃダメ…。
椿は自分にそう言い聞かせながら
道具を棚の中に入れる。
そんな彼女の姿を静かに横目で眺めながら
善はいつもの妖美な笑みを
スッとしまった。
そこにあるのは
---彼の 真っ直ぐな眼差しだけ。