不器用な愛を刻む
---お酒が運ばれてきてから
少しして
ゆっくり呑んで
2人に酔いが回ってきた頃には
すでに外は暗くなり始めていた。
「何で西洋の服を来ないの?
和服って着にくいし、歩きにくいでしょ?」
「こっちの方が慣れてる。
今更変える気にならねェだけだ。」
自身の着る服の話をしながら
2人は軽くつまみを食べ
自由な時間を過ごす。
「そうなの?
まぁ和服の人もまだまだいるもんね。
そういえば椿ちゃんも和服だしね。」
喜一がそう
さり気なく椿の名前を出すと
微かに 善が反応する。
だがそれも
ふと視線を向けてくる---というだけの
何でもなさそうな行動だった。
「…そういやそうだな。
まぁあいつも、同じような理由なんじゃねェのか。」
善はその一瞬だけで
すぐに視線を料理に移して
喜一から逸らす。
そして軽くそのように告げると
つまみを一口、口に含んだ。
「…あぁ そういえば
今回帰りが遅かったこと、椿ちゃんが心配してたよ。」
「……何でお前がそれを知ってるんだ?」
喜一がふと思い出したように
善にそれを告げれば
善は少し眉間にシワを寄せながら
疑問を彼に向けて口にする。
それに対して喜一は
いつものように優しくクスッと笑いながら
善に言葉を返す。
「パトロール中に彼女に偶然会ってね。
元気がない様子だったから、少しお茶に誘ってお話ししたんだよ。」
「………。」