不器用な愛を刻む
『心に宿る嫉妬』
(……善様遅いなぁ…。)
その頃
椿は掃除や片付けを終わらせ
静かに善の帰りを待っていた。
起きてから役所に行くと言ったきり---
とっくに要件は済んでいるだろうに
まだ戻ってこない善を
少し心配しながら、店で彼の帰りを待っていた。
(腕の怪我のこともあるし…
何もなければ良いんだけど…。)
そう思いながら
静かに目を閉じて時間が過ぎるのを
待っていれば
-----ガラガラ、ガシャンッ!!
と
不意に 勢い良く店の戸が
開けられる音がして
椿は反射的に ビクッ!と肩を揺らした。
(……善様…?)
いつもならこんな怖い開け方をするような人物ではない善に
椿は本当に来たのは彼なのだろうか、と
少し警戒しながら
玄関へと向かう。
「………あ…善様…。」
「………。」
そこへ向かえば
玄関には
自分の待っていた善の姿があり
特に怪我や何かがあるわけでは無く
無事な姿であるのは確認できた。
…しかし、どこか様子が変だった。
「あの…どうかされたんですか?
……あんな強く、扉を開けるなんて…。」
「……椿。」
椿が
履き物を脱ぐ善に
そう 静かに声を掛けると
善が少し黙ってから
彼女の名を呼んだ。
その声に椿が、「はい?」と返事をして
彼を見上げると…
自分を見下ろす
善の瞳と、目が合った。
しかし
そこにあった善の瞳には
-----薄っすらと、怒りがこもった
熱い視線が込められていた。