不器用な愛を刻む
そんな彼の視線に
椿は疑問と違和感を覚えて
それを尋ねようと口を開こうとするが
---不意に腕を掴まれて、善に引っ張られる。
(っ…?!)
少し強く掴まれた腕を引っ張られ
体がグンッ!と持って行かれる。
そしてそのまま善は
店の奥へと歩き進んで行き、
上の階へと続く階段を
登り始める。
何がどうしたのか、と
混乱する椿だったが
どんなに彼の名前を呼ぼうと
どうしたのかと尋ねようと
彼から返事が返ってくることはなかった。
---そしてやがて、椿の寝泊まりしている
彼女の部屋を通り過ぎ
ついに1番奥にある
善の部屋へと…辿り着く。
-----バンッ!
と、善は部屋の戸を勢い良く開けると
椿の腕を引っ張って
彼女を部屋の中へと連れ込む。
そして
2人が中に入ったところで
善が部屋の戸を閉める。
「……ぜ、善…様……?」
明らかに様子がおかしい彼に
椿は少し怯えながらも
彼の名前を、再び口にする。
すると
自分の方へ振り返った善が
-----グイッ!と
また椿の腕を引いて
次は善の胸に飛び込むように
彼に体がぶつかる。
「きゃ……っ?!」
その行動に驚き
目を見開く椿。
そしてすぐに離れようと
身を動かすも、
善が空いていた片腕を
椿の腰に回し
---ギュッ、と
彼女が逃げないように
力を込める。
「っ…善様、何を…?!」
「…うるせぇよ。」
「っ!!」
そこでやっと
善が口を開いたが、
その声はとても---低く、鋭いものだった。