不器用な愛を刻む
(っ…やだ…誤解されたくない…。)
そう思うのに、声が出ない。
涙が溢れそうになって
今声を出したらきっと止まらなく流れてしまう。
そう思った椿は
涙をグッとこらえるように
力を込める。
「…お前を貰ったのは俺だ。
お前をどうするかも側に置くのも俺が決める。」
そう、横暴な感じに聞こえる言葉を
椿に向ける善。
しかしそう言いながらも
どこか苦しげに顔を歪め
気持ちと葛藤するような様子は
ペットを取られた飼い主の様な
姿とはまた違う---。
「……善、様…。」
「…あいつには渡さん。」
自分の名前を呼びながら
真っ直ぐとこちらを見て
首を左右に微かに動かす椿に
善は静かに、そう噛みしめるよう呟く。
(っ------お前は---。)
「お前は…俺のものだろ…っ。」
「っ…んっ!?」
湧き上がる熱く苦しい気持ちに
思いのままの欲望をぶつけ
そう椿に告げる善。
そしてついに---
感情のままに 唇を奪った。
貪るように
激しく
喰らうように
何度も何度も、重ね合わせ
全てを絡め取る。
心の中で葛藤しながらも
自分の燃えるような黒い感情---。
こうして彼女を
自分の手の内に留めておきたいという
この感情は
-----まさに、心に宿る嫉妬の炎だった。
「っ…ん、善…様…っ。」
「……っ…。」
その後も善は止まることなく
椿の唇を貪り
激しく重ね合わせ
-----そして少ししてから
お互い荒い息遣いを残し
唇を離した。
椿の頬には
目を閉じた時に流れ落ちてしまった
涙の後が残っていた---。