不器用な愛を刻む
『その命代わりに俺が貰う』
「……もう桜は散ったみてぇだな。」
まだ人が町を行き来している昼下がり
営業を始めていない
静かな店内の窓辺に寄りかかりながら
外を眺めて男が呟く。
まだ世には珍しい
色が抜けた金色の短い髪が
生温い風に少々なびいている姿は
まだ日の出ているうちと言えど
どこかもの憂い気で
妖しい色気を感じてしまう。
「……そうですね…。」
そんな事を考えながら
その男を見つめる若い女-----
名は椿(ツバキ)。
この男に拾われ
今では男と一緒に
この店の経営に携わっている。
そして椿は
この妖しい男に惚れていた。