不器用な愛を刻む




酒の酔いも回ってか

少々潤む目に上気している頬を
椿に向け

瞳を揺らしながら
彼女を見下ろす。







(………何なんだ、この感情は…。)








今まで人に興味など持ったことのない

自分でも冷徹で残酷な心だと
自負していたはずなのに




椿の前になると
どうも変に感情が揺さぶられる---。





他の男…特に喜一と馴れ合っているなど
相当気分を害す原因である。

贈り物までもらう仲で

なおかつそれを大事に持っていると思うと------







(…苛立つ…この胸の熱さは何だ…?)








自分でもこの感情が何なのか
分かっていない善は



目の前で涙を流して自分を見上げる
椿の頬に、手を伝わせた。







そして指で、涙を拭う。









「……泣くほど嫌か。」

「……いえ…違います…。」

「違う…?
じゃあ何だって言うんだこりゃあ…?」

「………わかりません…。」








-----愛している善に
気持ちが届かない歯痒さ、切なさ。




率直に気持ちを伝えられない自身への
心の弱さ故だろうか---。






そう考える椿の その言葉に

善は少し沈黙を置いてから
彼女の腕を離した。








「……もういい。部屋から出ろ。」

「……善様…。」

「聞こえなかったのか?
…出ろと言ってるだろ。」








冷たく言い放つ善に

椿はそれ以上何か言うことなく、





そのまま静かに
善の部屋の扉を開けて 出て行った。








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