不器用な愛を刻む
1人部屋に残り
久々に自分の部屋で時間を過ごすことになった善は
部屋の奥にある窓に近づき、
そこから外を眺める。
「……お前ェは強いな…。」
誰もいない部屋で
善が静かに
先ほどの椿の言葉に対して、そう返す。
…両親が突然死んで
自殺すら望み挑んでいた娘が
知らぬ男の言葉と言えど
自分の力にして
こうやって1人…生きてる。
-----孤独にもがいて心を閉ざした自分とは違う。
善は
椿の生きる様子を側で見てきた上で
そう思っていた。
…孤独をよく知っているからこそ
孤独に溺れて死にそうだった彼女を見放せなかった。
(…喜一に託せば、あいつは少しでもその孤独から解放される……だってのに…)
------こうして生まれたこの感情が
それを邪魔する。
(……俺は……あいつを手放したくない。)
そう自覚している自身に
疑問と呆れる笑みがこみ上げてきて
善は自嘲の笑みをこぼす。