不器用な愛を刻む





少ししてからやってきた料理を見て

2人は手を合わせて
食事を始める。







「……ん!美味しいですね、善様!」

「そうだな。」







善との食事を楽しんでいる椿。




嬉しくてなのか美味しくてなのか
分からない笑みを

食べながら浮かべる椿を見て

善はフッと笑みをこぼした。









「…これ食べたら、少し歩くか。」

「あ…はいっ!」







(食事以外でも外へ……嬉しい。)





帰りにお団子を買って帰ったら
それで終わりだとばかり思っていた椿にとっては

今の善のさりげない一言は

胸を躍らせるほどの嬉しさがあった。








(……機嫌は、悪くねェみてぇだな。)








そんな椿を眺めながら

善は昨日の自分のしたことに対して
椿が今不満を抱いていないことに

少しだけ安堵した。






別に外に誘ったのは単に
昨日の罪滅ぼし---というわけではない。



自分の欲に従っただけの善だが

これが同時に機嫌直しになるなら…と
早速誘ってみたのだった。








(…一石二鳥…ってとこか。)








善はそう考えながら
フッとまた笑みを浮かべて


目の前で食事を楽しむ椿を眺める。







< 56 / 180 >

この作品をシェア

pagetop