不器用な愛を刻む
少ししてからやってきた料理を見て
2人は手を合わせて
食事を始める。
「……ん!美味しいですね、善様!」
「そうだな。」
善との食事を楽しんでいる椿。
嬉しくてなのか美味しくてなのか
分からない笑みを
食べながら浮かべる椿を見て
善はフッと笑みをこぼした。
「…これ食べたら、少し歩くか。」
「あ…はいっ!」
(食事以外でも外へ……嬉しい。)
帰りにお団子を買って帰ったら
それで終わりだとばかり思っていた椿にとっては
今の善のさりげない一言は
胸を躍らせるほどの嬉しさがあった。
(……機嫌は、悪くねェみてぇだな。)
そんな椿を眺めながら
善は昨日の自分のしたことに対して
椿が今不満を抱いていないことに
少しだけ安堵した。
別に外に誘ったのは単に
昨日の罪滅ぼし---というわけではない。
自分の欲に従っただけの善だが
これが同時に機嫌直しになるなら…と
早速誘ってみたのだった。
(…一石二鳥…ってとこか。)
善はそう考えながら
フッとまた笑みを浮かべて
目の前で食事を楽しむ椿を眺める。