不器用な愛を刻む
「---おぉ嬢ちゃん!また来てくれたのかぃ?」
「……っ。」
---そんな時だった。
不意に横から声をかけられて
椿はビクッと反応する。
この声を---知っている。
自分で苦手なのを自覚している椿は
苦笑いを浮かべながら
店主の方へ振り返る。
「今日も新作を揃えてんだ!
どうだい?見て行ってくれよ!」
「あ…えっと、あの…。」
---案の定
店主はこちらを見ながら近づいてきて
椿の横にピタッと張り付いた。
…店主はまだ善に気づいていない。
「この前の旦那はどうしたんだい?
あの髪留め良かっただろう?」
だからこそ
この台詞が出てきてしまったのだ。
「─────髪留め?」
「!!」
その言葉に反応したのは
---もちろん、善だった。
無意識なのか
僅かに 眉間にシワを寄せて、
店主を睨むように見下ろす。
その声に店主が顔を上げると
善を見て
思わずビクッと怯えて肩を揺らした。
…それも仕方が無い。
ここらじゃ外人以外には見ない金髪に
あの着物を着る男。
身長も高く、見下ろされながら
鋭い視線を向けられ
尚且つ---店主の瞳には
あの"刺青"も見えているのだから。
「…えっと、嬢ちゃんの知り合いかい?」
「あ…はい…。」
しかし
そんな善に圧倒されながらも、
さすがは商売人と言ったところか
すぐに気を取り直して
椿にそう尋ね返した。
椿が店主の言葉に小さく頷く。