不器用な愛を刻む
「…何だ、今日は一段と大人しいじゃねぇか椿。
何か心に突っかかることでもあるのか?」
「え……いえ、ないですよ。」
椿はそう返事するものの
納得いかない様子で
少々眉間にシワを寄せる男-----
名は善(ゼン)。
椿の命の恩人であり、
この店の店主である。
歳はまだ若く
成人を過ぎてはいるものの
椿と大層な年の差があるわけではない。
それなのにも関わらず
…どこか反論できない
"恐さ"を放つのが
この男の特徴であった。
特に今は---それがまた強く増した。
「……この彫りモンに怒ってんのか?」
「…いえ…そんな……。」
その原因は
首筋に見える
大きな刺青(タトゥー)である。