不器用な愛を刻む
「…さっき食いてェって言ってたのはこれか?」
「あ…はい、そうです!」
少し歩いた先で
ふと善が足を止めて 椿を見て言った。
彼らの視線の先にあるのは、団子屋。
店前に
何種類かの団子が置かれ
町人がそれを見下ろすように眺めている。
「…甘ぇモン 好きなのか。」
「はい!大好きです。」
椿の答えに
自分が苦手なのもあってか、
不思議そうに彼女を見る善。
椿に欲しい種類を尋ねて
それを2本ずつ買う。
醤油味のものなら自分も食べられると言って
醤油味の団子だけ、
食べ歩きように追加で1本ずつ購入した。
「-----椿、口開けろ。」
「え?」
「ほら、早くしろ。」
椿の分も持っている善は
突然椿にそう言った。
何でだろう、と疑問に思いながらも
急かしてくる善の言う通りに
口を開ければ
善が持っていた団子を
椿の口の中に入れる。
「っ、ふぇ…?!」
「フッ…どうだ、美味いか?」
所謂『あーん』、というやつを
少し違った感じではあるが
行った2人。
意図的に実行した善は
満足そうにニヤッと笑いながら
椿の顔を覗き込む。
それに対して
不意にされたこの行動に
鼓動を鳴らす椿は
顔を赤くしながら、慌てる。