不器用な愛を刻む
何だか変な感じがして
椿は静かに草履を履いて
玄関の扉へ近づく。
(-----まさか、また怪我を…?)
いつぞやの彼の姿を思い出し
椿は不安に心臓を鳴らす。
もしかしたら…どこか痛むのかも…。
そう思ったら居ても立っても居られず
椿は玄関の扉を開けた。
「っ…………善様…?」
椿は小さく彼の名前を呼ぶ。
1歩、2歩…と歩き進んで
店の周りを見てみるも-----。
(……あ、れ…?)
───彼の姿は、どこにもなかった。
それどころか
この時間帯なのもあるが
人気が全くない。
……風の音だったのだろうか?
そう思うと
何だか椿はガッカリして
シュン…と気持ちを落としながら
仕方なく家に戻ろうと引き返す。
─── カチャ…
しかし
確かにまた
次は-----すぐ近くで。
先ほどの物音が 聞こえた。
「……!善さ---!」
------善様。
そう呟こうとした椿の声が
途中で、途切れた。