不器用な愛を刻む
(……上で寝ているのか?)
本来2人の生活する部屋は
奥の階段を上った上の階のはず---。
それならば今日は上に…?
急いで確かめる他ないと思った喜一は
中へと足を踏み入れる。
---すると
階段の方に近づいていくにつれて
誰かの『声』が聞こえた----。
「っ、椿!! どこだ椿ィ!!!」
「───!!」
大きな声で
叫ぶようにして
バタバタと暴れる音がして
喜一は目を見開いた。
そしてそれと同時に
血の気が引くような感覚と
ドク、ドク、ドク---と
嫌な予感を訴える心臓の音が、耳に響く。
-------ダダダダ…!!
喜一は急いで階段を駆け上り
その声の主と同様に
切羽詰まった様子で
辺りを見渡した。
(----------っ!)
上った先では
ある部屋全ての扉を乱暴に開け
息を切らせ、肩で息を吸い
動揺したように目を見開く
───善の姿があった。