不器用な愛を刻む






「っ……喜一…。」

「…善……。」







善は喜一の姿を確認すると

嫌な予感がしたのか
怪訝に眉を寄せながら

彼を見る。








「…っ…手遅れだったか…!」








善の様子や

この家に彼女の姿がない事実---。





喜一は悔しそうに顔をしかめて

握っていた紙を
また強く握りつぶした。








「……どういうことだ、喜一。」

「っ…。」

「椿は───どこにいる?」








喜一が顔を上げて

善の顔を見ると……







(っ───!)








強い殺気を身から放出しながら


血走るような力強い目が

鋭く-----喜一を捉えていた。







そんな善の視線に


喜一も一瞬、ゾッと背筋を凍らせた。









「……さっき、こちらに
この文が届いた。」

「……文…?」

「…あぁ。
…そして、その内容が----。」










---そして




善は喜一の言葉を聞いて

目を見開いた。













『---鬼の娘を捕え殺めよう。
助けたくば直ちに鬼を差し出せ。』








< 70 / 180 >

この作品をシェア

pagetop