不器用な愛を刻む
「っ……喜一…。」
「…善……。」
善は喜一の姿を確認すると
嫌な予感がしたのか
怪訝に眉を寄せながら
彼を見る。
「…っ…手遅れだったか…!」
善の様子や
この家に彼女の姿がない事実---。
喜一は悔しそうに顔をしかめて
握っていた紙を
また強く握りつぶした。
「……どういうことだ、喜一。」
「っ…。」
「椿は───どこにいる?」
喜一が顔を上げて
善の顔を見ると……
(っ───!)
強い殺気を身から放出しながら
血走るような力強い目が
鋭く-----喜一を捉えていた。
そんな善の視線に
喜一も一瞬、ゾッと背筋を凍らせた。
「……さっき、こちらに
この文が届いた。」
「……文…?」
「…あぁ。
…そして、その内容が----。」
---そして
善は喜一の言葉を聞いて
目を見開いた。
『---鬼の娘を捕え殺めよう。
助けたくば直ちに鬼を差し出せ。』