不器用な愛を刻む
「------目が覚めたか。」
「!!」
知らない低い声が聞こえて
椿はハッとして顔を上げる。
男は部屋に入ってくると
---静かに、椿に近づく。
そしてそこでようやく
男の姿を捉えることができた。
(───!!)
男の姿を見て、
椿はドキッと目を見張る。
「…フッ……お前が"鬼の女"か…。」
男はそう言って小さく笑うと
椿の前に屈んで
彼女の顎に静かに---指をかける。
…彼が何者なのかは分からないが
彼の腰に装備されている
銃を見つけて
すぐに普通の人ではないことを察する。
…少しだけだが
まだ出会ったばかりの頃の
善の目と…似ている気がした。
-----殺すことを、知っている目。
「っ…な、何……っ。」
「──何で、奴はお前にこだわる?」
クイッと
男は椿の顎を上げると
読めない無表情な目つきで
椿を眺める。
───こだわる?
彼が、自分を?
椿は男の言葉に疑問を抱きながら
黙って彼を見上げられる。
…自分が、善の特別だという自覚は
もちろん…毛頭ない。
なんていったって
自分はただ…拾われただけの娘だから。
「……まぁいい。
お前が手に入り、準備は整ったからな。」
「準備……?」
そう言うと
男は不敵に、口角を上げた。