不器用な愛を刻む






「------目が覚めたか。」

「!!」






知らない低い声が聞こえて

椿はハッとして顔を上げる。




男は部屋に入ってくると



---静かに、椿に近づく。




そしてそこでようやく

男の姿を捉えることができた。







(───!!)







男の姿を見て、

椿はドキッと目を見張る。







「…フッ……お前が"鬼の女"か…。」







男はそう言って小さく笑うと


椿の前に屈んで

彼女の顎に静かに---指をかける。







…彼が何者なのかは分からないが


彼の腰に装備されている
銃を見つけて

すぐに普通の人ではないことを察する。




…少しだけだが


まだ出会ったばかりの頃の
善の目と…似ている気がした。







-----殺すことを、知っている目。









「っ…な、何……っ。」

「──何で、奴はお前にこだわる?」








クイッと

男は椿の顎を上げると




読めない無表情な目つきで

椿を眺める。






───こだわる?






彼が、自分を?






椿は男の言葉に疑問を抱きながら

黙って彼を見上げられる。




…自分が、善の特別だという自覚は
もちろん…毛頭ない。



なんていったって




自分はただ…拾われただけの娘だから。









「……まぁいい。
お前が手に入り、準備は整ったからな。」

「準備……?」








そう言うと


男は不敵に、口角を上げた。








< 73 / 180 >

この作品をシェア

pagetop