不器用な愛を刻む
「この前あの男に…組織を壊滅させられた。
否---させられかけた、が正しいか。」
「………?」
善が、組織を壊滅?
この前…ということは
私がきっと来てからの依頼の中に?
(でも確か-----彼はそんな大きな事件に
関わる仕事はやらない約束では?)
椿の中で様々な矛盾が駆け巡り
混乱しながら、目の前の男を見つめる。
(……!まさか…!)
-----怪我を負って帰ってきた、あの日?
もし男の話が本当に彼の仕業なら
あの日が1番、有力---。
でもどうして
そんな仕事を彼に---?
「そのお礼参りだ…これは。」
「…お礼、参り…?」
言葉の意味がわからず
椿は眉を寄せながら、彼を見る。
男は愉快そうに口角を上げ
ソッと…椿の頬を撫でる。
「お前を人質に、奴を誘き出して
───あの男を殺す。」
(───っ?!)
その言葉を聞いて
椿は目を見開き、息を飲んだ。