不器用な愛を刻む
コツ、コツ──。
ゆっくりと階段を降りていけば
下に、その足音が響く。
銃声が段々聞こえなくなるのを感じて
喜一は地下に防音効果があると知る。
きっと椿が叫んだ所で
これじゃあ助けが来ることはない──。
(……着いた。)
入り口に監視役がいるかもしれないと
周りに警戒しながら、
静かに神経を研ぎ澄ませた。
…扉の向こう右側に人の気配がある。
喜一はそれを確認すると
腰に備えておいた銃を持って
目を細めて視線を尖らせた。
(1…2……3-----!)
───ドンッ!!
「っ、誰だ---っぐ?!」
パンッ!パンッ!パンッ──!!
カウントと同時に足で扉を開け
中に入れば
案の定
右側に1人、監視役がいたのを確認した。
「……よし。」
しかしそれも喜一の想定の内──。
3発
腹部と心臓と頭に
正確に弾丸を打ち込むと
男は静かにその場に倒れ
ピクリとも動かなくなった。
(…っ、急げ…!)
事は早く済ませることに
越した事はない。
喜一は足を早めて
奥にある鉄格子に近づいた。
…暗くて遠くからでは姿を確認できなかったが
近づくにつれて
その姿をはっきりと捉えることができた。