不器用な愛を刻む
大量の血を浴びた着物を着て
何人も殺めたであろうその刀を手に持ち
冷酷な目で前を見つめている善。
その姿がここにあるということは---?
「…敵は…片付いたのか…?」
「ククッ、まぁな。………椿。」
あんなに飛び交っていた銃声からして
そんなに少ない数ではなかったと思うが---。
喜一はそう思いながら
目の前にいるこの男の恐ろしさを
改めて実感する。
───笑顔で人を殺せる人間。
そのすごさに
喜一は無意識に
一瞬背筋をゾッとさせた。
そんな喜一から視線を逸らして
善は格子の奥にいる椿へと
意識を向けていた。
「……善、様…?」
「あぁ、そうだ。
……遅くなったが、帰るぞ…椿。」
ほら、こっちに来い---。
そう言う善に
椿は涙を目に溜めて大きく頷く。
彼が来てホッとしたのか
椿は震えた身体をゆっくり立たせて
フラフラと歩んでくる。
(あぁ、ちゃんと…ご無事だ……。)
あの男の作戦で
善が来てしまったらどうしようと思った。
怪我を負うかもしれない。
下手をすると命を落とすかもしれない。
そんな不安が頭をグルグル駆け巡っていた。
でも
今こうして
彼は生きて自分を迎えに来てくれた──。
椿はそう思うと同時に
溜めていた涙をこぼした。
「っ…良かった……ご無事で…。」
「ククッ…
自分の心配より俺の心配かァ?」
馬鹿な女だなァ、椿。
善はそう言いながら
いつもの妖しい笑みを浮かべて
椿へと
手を差し伸べた───。
「お前残して、死ぬわけねェだろ?」
その言葉を共にして───