天使の梯子

あのふたりの出会いは、いわゆる合コンだ。


暎仁はモテるから行く必要もなくて、絶対にそういうものには参加しなかった。あの日は、俺が強引に誘って連れて行った。


「は? 合コンとか絶対行かねぇし。俺、困ってねぇから」


「そんなのわかってるよ。だけど、人生で一回くらい経験しとくのもいいだろ?案外、運命の出会いがあるかもしれないぞ」


強引に誘う俺に、暎仁はあきらめたようにため息をついた。


「……雰囲気ぶち壊しても知らねえからな」


嫌そうな顔を隠しもせずに、人生初の合コンに参加した暎仁は、そこで本当に運命の出会いをした。


その子は、どうもだまされて連れて来られたみたいで、こういう場が初めてなのか落ち着かない様子だった。


色が白くて童顔で、まだ高校生くらいに見えるその子は、「松本楓です」と、小さな声で自己紹介をした。


< 102 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop