天使の梯子
その日は楓ちゃんの二十四歳の誕生日で、本当なら暎仁はこの日に楓ちゃんにプロポーズするはずだった。
だけど急患が入って暎仁は来れなくて、楓ちゃんの友達何人かと飲むことになった。
楓ちゃんは本当にいい子で、暎仁が来られなくなっても怒っていたりはしなかった。
本音では寂しいと思ってるんだろうけど、きっと医師としてのあいつを尊敬もしてるんだろう。
暎仁と付き合い出してから、楓ちゃんはどんどん綺麗になった。
暎仁のことを想っているんだろう。寂しげに目を伏せた姿には、男をそそらせる色気があってゾクリと身体の奥底が震えた。
「楓ちゃん、今日はとことん飲んじゃいなよ」
俺のすすめに笑ってお酒を飲む楓ちゃんを見て、ふと思った。
暎仁の一番大切なこの子を、俺が奪ったらあいつはどんな顔をするんだろうか。
怒るだろうか、悲しむだろうか。苦痛に歪んだ姿を、俺に見せてくれるだろうか。