天使の梯子
「私も最初から見ていたわけじゃありません。突然倒れて胸を押さえていたので、心筋梗塞かと。CPAでしたので心マをしました」
「それはもう救急隊に聞いた。俺が聞きたいのは……」
射抜くような、強さを秘めた真っ黒な瞳。
はっと息をのんだ私を見て、すっと目を細める。
ああ、そうだ。あの頃の私は、いつもこの瞳に見つめられてドキドキしていた。
そして今も、あの頃と変わらず……ううん、あの時よりこの瞳にドキドキしている。
「楓。なんで、俺の前から黙っていなくなったの?」
その瞳に、言葉に、心臓が掴まれたみたいに痛くなった。
身体から血の気が引いていくのが、自分でも分かる。
思わず視線を逸らして胸を押さえる私を、その人は黙ったまま見下ろしている。
それからため息をついて、下を向いている私の頭を撫でた。