天使の梯子
「暎仁くん、ごめんね。大好きなの」
ああ、暎仁がどうしてこの子に夢中になったのかがよく分かる。
この子は、すごく綺麗だ。
暎仁のことを本当に好きで、自分の欲求を我慢してでも支えたいと思っている。
医師として救命という過酷な現場で懸命に働いている暎仁のことを尊敬してて、誰よりも暎仁のことを想っている。
この子は自分のことよりも、暎仁のことを大切にしているんだ。
うわ言のように、ごめんねと、暎仁への愛の言葉を囁く楓ちゃんの頭をなでると、安心したように眠ってしまう。
その身体にシーツをかけて……俺は両手で顔を覆った。
今頃、暎仁は必死に目の前の命を救おうと戦っているんだろう。
なのに、俺はなんだ……俺は……。
俺の中の醜い感情は大きくなるばかりで、痛くて、苦しくて仕方なくて……俺は楓ちゃんに意地悪をした。