天使の梯子
次の日の朝、目が覚めて俺と裸でホテルのベッドの上にいることに動揺する楓ちゃんに……誘ったのは楓ちゃんだと嘘をついた。
本当はそういう行為はしていないことも告げなかった。
ただの八つ当たりだった。楓ちゃんのひどく傷ついた顔を見ても、少しも気は晴れない。胸の痛みは強くなるばかりだった。
バカな俺は、そのうちに本当のことを話せばいい。次に会う機会があったときにでも、本当のことを話せばいいと思っていた。
それが大きな間違いだったことに気づくのは、二ヶ月後のことだった。
それから楓ちゃんに会う機会もなく、罪悪感を抱えながら日々を過ごしていた俺は、ある日うちに当直に来た暎仁を見て驚いた。
やつれた顔で、目の下には濃いクマ。顔色も悪く、目に力もない。
そんな暎仁を見るのは初めてだった。